四〇〇字程度

おもしろいこと言える大人になるためには何をすればよかったのかと考える無駄使い

本の話はむずかしい

 

村上龍『音楽の海岸』を読んでいる。朝夕読んでいる。電車で読んでいる。不思議なことがある。この小説を鞄に入れて持ち運ぶようになってからというもの、電車で席に座ることができる。乗り込んだ駅から降車する駅まで座れる。ずっと読んでいられる。これはきっと作品のチャームだ。

しかし本当は知っている。『音楽の海岸』を持ち歩くようになったこの数日、私は10時に出勤して22時に帰るような生活をしていた。ラッシュから遠ざかっていた。そしてその勤務時間を設定したのは私ではない。その勤務時間を設定した人間は私が『音楽の海岸』を持ち歩いていることを知らない。

でも私は落ち着いて読みたかったがために、3本に1本くらいある、妙に混んでいる列車に遭遇したとき、その列車を見逃したのだ。改札に近い降車口からわざわざ3両も隣の車両に移動したりもした。読みたかったから。きっと作品のチャームだ。

アミの部屋の窓の描写が二度出てくるが、一度目と二度目でその向こうにあるものが違う。違うのだよ

 

音楽の海岸 (講談社文庫)

音楽の海岸 (講談社文庫)